跨语言文化研究(第14辑)
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4.まとめ

以上、中国語母語話者日本語学習者の誤用や、プラグマティクスの用法における日本語と中国語の指示詞の異同、日本語の敬語とため口ことばにおける距離の示し方などを対象に、日本語が平行リングモデル、中国語が多重リングモデルであることについて論じてきた。その際、視点は話し手にとってそれらがウチの関係にあるかソトの関係にあるかというものであった。すこし補足してまとめると次のようになる。

①日本語の指示詞の「コ」と「ソ」の選択は、物理的な距離も基準の一つであるが、文化的な心理的距離つまり話し手がその情報がウチの関係にあるかソトの関係にあるかといった捉え方も重要な基準である。しかも後者の方が大いに「コ」と「ソ」の選択を支配している。一方、中国語の指示詞の“这”と“那”の選択は、文化的な心理的距離に基づくものではなく、物理的な距離か話し手自分自身との関わりに基づくものであると言っても過言ではないであろう。

②日本語の敬語とため口ことばの選択は、聞き手や参加者に対して敬意を表するよりは、聞き手や参加者との距離に基づくものである。その距離を決めるのが話し手である。つまり話し手が意図する距離の度合いによって、敬語やため口ことばが選択されるのである。

③日本語と中国語とは、同じく高コンテクスト文化を背景にする言語ではあるが、明らかに文化モデルが異なる。両言語とも他人のことを配慮する一面もあるが、日本語が平行リングモデルであるのに対し、中国語が多重リングモデルである。日本語の平行リングモデルにおいても、中国語の多重リングモデルにおいても、それぞれの中心に位置するのは話し手自分自身である。ただし、日本語の平行リングモデルは他人との関係がウチの関係にあるかソトの関係にあるかを重要視するのに対し、中国語の多重リングモデルはそうではない。

④平行リングモデルと多重リングモデルは、文法的にも意味的にも説明が困難な誤用についても解決の糸口を提供することができる。

ただし、この文化モデルは、階層的であると述べたが、それぞれの層においてどのような構成になっているか。また、日本語と中国語はともに相手を配慮しながらコミュニケーションの構築を行う高コンテクスト文化を背景とする言語であるが、両言語の共通点や相違点のメカニズムがどのようになっているかについては、更に掘り下げる必要がある。これは今後の課題とする。